• 検索結果がありません。

極端紫外光科学研究系 分子研リポート1999 | 分子科学研究所

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2018

シェア "極端紫外光科学研究系 分子研リポート1999 | 分子科学研究所"

Copied!
10
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

4-6 極端紫外光科学研究系

国内評価委員会開催日:平成11年12月12日 委 員 尾嶋 正治 (東大院工,教授)

佐藤 幸紀 (東北大科学計測研,教授) 難波 孝夫 (神戸大院自然科学,教授) 田中健一郎 (広大理,教授)

渡辺  誠 (東北大科学計測研,教授) 宇理須恆雄 (分子研,教授)

小杉 信博 (分子研,教授) オブザーバ 黒澤  宏 (分子研,教授)

田原 太平 (分子研,助教授) 見附孝一郎 (分子研,助教授) 長岡 伸一 (分子研,助教授) 福井 一俊 (分子研,助教授) 鎌田 雅夫 (分子研,助教授) 繁政 英治 (分子研,助教授) 国外評価委員面接日:平成11年11月8日∼9日

委 員 Professor Ingolf L indau (S S R L , S tanford University)

4-6-1 点検評価国内委員会の報告

(1)極端紫外光科学研究活動の現状 

UVSORは16年前に運転を開始し研究活動を展開して以来,国内外の高い評価を得てきた。その活動は,大別すると, ケミカルマシンと称されるごとく,設置時の主目的である分子科学研究への応用と,物理,生物,医学,光学の幅広 いユーザの共同利用への応用に大別される。これまでの成果を振り返った時に気付く大きな特色は,一つは,分子科 学という特定のフィールドに的を絞るとことにより,この分野での国際的リーダーシップを勝ち得ることに成功した ことと,第二は,挿入光源や赤外光源を装備した高性能な装置かつ,小型で使いやすい装置であり,また,他の施設 では許可されない,あるいはやりにくいような化学的実験もでき,放射光利用研究のすそ野を拡大するうえで,大き く貢献してきたことである。専任部門の最近の成果は,研究所内における系の存在感と放射光装置の必要性をアピー ルする柱となるもので,①内殻励起領域の高分解分光(小杉),②放射光による物質創製とナノ科学(宇理須),③放 射光とレーザの同時照射分光(見附,田原)である。また,分子科学応用の研究について,気体分子の励起蛍光分光, しきい電子分光などは過去において分子科学をリードするうえで大きな貢献をした。有機固体,無機固体,固体表面 の角度分解光電子分光,各種のイオン電子コインシデンス分光,赤外吸収分光,オージェフリー励起ダイナミックス, 直入射領域での各種分光,顕微光電子分光などの研究は,主として界面分子科学流動研究部門およびUVSOR施設の教 官や外部ユーザの方々の努力によるところが大きい。所内専用ビームラインによる分子科学研究は大きな特色である。 これは,所内スタッフおよび,目的を同じくする外部研究者との協力研究によって研究がなされている。先に述べた, 使いやすさの特色を最大限に生かせる結果,化学というミクロサイエンスの分野でユニークな新しい分野を開拓する うえで成功してきたと考えられる。ただし所内専用ビームラインの研究は,スタッフの人事異動にともなって,所外

(2)

研究者のテーマとなるため,所内,所外の区別は固定されたものではない。なお,所内スタッフの研究において,よ り高輝度の光源を必要とする部分については,他施設を利用して高度化を計っている。共同利用研究としての大きな 成果は,人工衛星搭載用X線望遠鏡ミラーの評価,生物の軟X線顕微鏡撮影,各種フラーレンの構造解析,各種光学 素子の評価,膜形成エッチング反応応用,などである。なお,UVSOR施設の光源に関する研究で特記すべきものとし て,自由電子レーザの開発の研究がある。 

(2)現状の問題点など

(a)UVSOR光源自体の老朽化対策が必要である。また,より高輝度の光源を使う必要のある研究が増加している。 (b) 光源の低エミッタンス化で外部と競争しても意味がない,実験ステーション装置の高度化,ユニークなアイデアの

発案などで勝負する方向が今後は重要であろう。

(c) 施設のみならず,研究系のスタッフの数も,一グループあたり,グループリーダを含めて1−2名と少なく,研究効 率の観点から問題である。

(d) 分子科学での啓蒙期の役割は終わった,これからは,もっと多くの分子科学者が利用し,設置初期の目的である分 子科学利用研究が,質量ともに活発に展開されることが望まれる。

(e) 分光器開発など,よりよい光源を提供する仕事は重要なので,良い評価を与えるべきである。放射光+レーザも今 までとは異なる光源を提供できることに注目したい。

(f) 流動部門について,現実に流動教官として来てみると非常に大変である。学生を連れてきて研究する費用が無い。 もとの大学との併任ができると良い。

(g) サイトスペシフィックの研究については,より選択性をあげる工夫など新しい特徴を追求することが望まれる。 (3)研究の将来展望

(a) 上記に掲げた外部ユーザの研究や所内専用ビームラインの研究を今後もさらに発展させることが望まれる。 (b) ほとんどの研究に共通して言えることは,高フラックス化,特にアンジュレータをふんだんに使えるようになるこ

とで,研究の質が飛躍的に良くなることが明白である。 

(c) 近い将来,他施設において,第3世代光源がフル稼働の状況となることから,暫定的にも,これらの装置を借りて, 飛躍の第一歩をふみだすことも重要と考えられる。

(d) 現在取り組んではいないが,将来重要となる可能性のあるテーマとしては,クラスターの軟X線光化学,軟X線− 赤外領域の顕微分光,生体物質応用,などが考えられる。クラスター研究は,実験スペースを広く取れるようにす ることが望まれる。また,クラスタービームのフラックスを上げる努力が必要である。

(e) 有機物のマルチカラー,あるいは二重共鳴の研究も面白い。 (4)装置の将来計画−極端紫外光科学研究系の見解−

系・施設の研究者での討論以外に,今回の点検評価を含めた国内外の所外の専門家による点検評価を受け,将来計 画についても有益な助言を得て来た。これらの経緯をもとに,以下のように考えている。

(a) 現在世界最高水準にある,所内外のユーザの研究を維持しさらに発展させなければならない。しかし,UVSORは すでに建設後16年を経過し,近い将来装置の老朽化が顕在化することが明白ある。

(b) 現在分子科学研究分野において非常にユニークな分野を開拓し,且つ国際的視野で高い水準にあるのは,①装置が 使いやすい,②所内(分子科学)専用ビームライン制度を有する,さらに,③所内の多様な分子科学研究者集団や, 機構内の基礎生物学研究所,生理学研究所などの研究者との交流により新しい発想を得やすい,などの特色による ところが大きい。この長所を将来も発揮するために,機構内において,装置の高性能化の改造あるいは新装置の設

(3)

置を行う必要がある。

(c) 装置の高性能化や新装置の設計においては,分子研の研究の特色を反映することに的をしぼり,この点においては, むこう20年間ほど十分な性能を保証するものでなくてはいけない。リングや分光器の性能を追求するだけでなく, マンパワーの確保や,現在の特色である使いやすさの保持も高水準な研究を展開する上で無視できない重要な課題 である。

(d) 設計については,上記の点と土地問題を配慮し,加速器の専門家のシュミレーションによって,第三世代に準じた 高フラックス(アンジュレータが主),できるだけ小型,ユニークな時間構造,ユーザーフレンドリ,などのキー ワードを考慮した,新しい加速器設計概念を掘り起こすことが望まれる。

(e) 装置の高性能化,あるいは新装置の設置の方針策定にあたっては,既存の装置の再使用可能部分の活用,これまで のビームラインおよび,実験ステーションの莫大な投資と,所内外の多数のユーザに蓄えられた知的資産を十分に 活用し,コストミニマムを十分に配慮する必要がある。

(f) 現有装置でも 500 mA 運転が可能であるが, そのためには前置ミラーの耐熱性の向上や,部分的な放射線遮蔽の向 上が必要である。また前置ミラーなどをより平滑にし,表面散乱を抑制しフラックスを向上させることも大いに意 味がある。

4-6-2 国内委員の意見書

_ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ 委員A 分子研UVSORは16年が経過したマシンであり,これまでに分子科学の発展に大きな貢献をしてきた。これは1つは 分子科学にターゲットを絞った施設として運用するという戦略,もう1つは優れた施設研究者たちの努力によるもの であろう。17年以上経過したPFとちょうど補完するような形で大きな成果を挙げて来たと思う。特に放射光−レーザ 同時照射分光,内殻励起領域高分解能分光,放射光ナノ物質創製などで極めてユニークな成果が出ている点を高く評 価したい。 しかし,マシンの老朽化は否めず,またスタッフ,学生の数の少なさは驚きである。S Pring8 の速い立ち上 がり,PF高輝度化,第3世代軟X線光源計画などの外部状況を考えると,今後の戦略が今一明確でないと思われる。分 子科学として何をやれば世界で B ig になれるのか,21世紀の分子研のミッションは何か,基礎生物学研究所などとの 共同研究をもっと全面に出して「分子生命科学研究所」的にターゲットを広げるのか,その中で極端紫外研究系の役 割は何か,などの問いに答えを出さなければならない。単に高フラックス化,使いやすさの追求,クラスター研究の 重点化などでは,対処出来ない大きな課題である。是非,21世紀の分子科学をリードして行って頂きたい。

_ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ 委員B

・ 当該研究系の研究内容については,UVSOR施設の放射光を利用しているか否かに関わりなく,全体的には,分子科 学として高度の質を維持した研究が行なわれているという印象を受けました。

・ 当該研究分野における分子研の特色を打出してゆく一つの方向は,分子研内でも十分に意識されているようではあり ますが,やはり,放射光とレ−ザ−の組み合わせによる研究を発展させてゆく方向であろうかと思います。この点で, 見附グル−プ,田原グループ,および鎌田グル−プの研究は新たな研究手法と新たな研究領域の開拓を目指して,放 射光光源として現在のUVSORの利点を生かし弱点を克服するために非常な工夫と努力を重ねておられることが伺わ れ,大いに評価いたします。今後のますますの発展に期待します。

・ UVSORにフェムト秒レ−ザ−を組み合わせて,電荷移動,プロトン移動,異性化反応などの基本的な化学変換過程

(4)

を位相制御する研究も分子研に適したテ−マではないでしょうか。このような研究には,現に田原グル−プで推進さ れておりますように,必ずしも放射光を用いる必要は無いかも知れませんが,放射光とレ−ザ−を組み合わせること による特色が生かせれば新しい研究分野が開かれると思います。

・ 分子の多様性に着目する研究も分子研の特色を打出す健全な方向の一つであると思います。この点から,有機分子, クラスタ−,生体高分子,或いはそれらのイオンを対象に,放射光や放射光+レ−ザ−を利用する研究を追求する方 向を深めることも考えらます。例えば,大きな分子のイオン(正イオン或いは負イオン)を蓄積するリングやトラッ プを放射光実験に導入することなども有り得ると思います。ヨ−ロッパではインシュリン等に電荷を帯びさせて蓄積 するイオン蓄積リングが建設されています。

・ 分子の内殻励起によるサイト選択的な解離反応の研究は,今後は,サイト選択性が生じるメカニズムの解明を深めて ゆく方向と,サイト選択性を応用する展開的な研究とに分かれてゆくと思います。UVSORを用いる場合には,分子 の多様性に着目した展開的な研究が適していると思います。

・ 小さな分子の光解離では,サイト選択性のメカニズムを追求すると,結局は選択制に限界があることの理由を追求す ることになります。それよりは,高分子や,長岡グル−プが計画しているような表面吸着分子などを対象とする応用 的な研究の方が面白そうです。長岡グル−プの今後の発展に期待します。

光源施設として分光器を含めたビ−ムライン光学系の性能を向上させることは放射光施設にとって不断に必要な努 力でありますから,このような努力には十分な評価を与えるべきかと思います。この点から,不等刻線平面回折格子 分光器,SGMあるいはSGM,TRAIN,3mNIM等の導入を高く評価いたします。今後も,現在の電子蓄積リングの 許す性能の限界まで光源としての性能を改良してゆく努力は重要であると思います。

_ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ 委員C 平成11年12月12日に開催された極端紫外光科学研究系点検評価委員会で,研究活動の現状報告を受け,まず,スタッ フの数が圧倒的に足らないことを痛感した。この状態で,それぞれが研究成果を上げており,これ以上を求めること は無理である。しかしながら,以下に記した意見を,今後の研究方針を定め,将来構想を構築する際の参考にしてい ただきたい。

人的資源の有効活用と組織化が急務

基礎光化学研究部門では,国内外の研究者と活発な共同研究を行っており素晴らしい成果をあげているが,分子研 独自の研究とは言い難く,新たな展開を期待したい。一方,反応動力学部門では,物質創製とナノ科学に関する研究 の展開を試みており,放射光科学が今後進むべき一つの方向として魅力的ではあるが,学問的位置づけを明確にする 必要がある。

分子科学の新分野を発展させることが極端紫外光科学研究系の本務である以上,両研究部門には,これまで進めて きた研究とは視点の異なった研究が求められる。個々の研究者が独自の研究を進めるのは当然のことであるが,UVS ORの目玉となる研究成果を生み出すためのプロジェクトを関係研究者間で話し合って決めてみてはどうか。PFや S Pring-8 とは違ってユーザーが比較的分野の共通した研究者集団であるので,不可能なことではない。そのためにも, 極端紫外光科学研究系が中心となって,少ない人的資源の有効活用と組織化に取り組んでいただきたい。

放射光分子科学の将来について

放射光利用研究は,多くの研究分野においてまだ成熟期に達しているとは言い難い現状である。分子科学の分野に おいても未開拓な分野が多く残っており,放射光利用研究は無限の可能性を秘めている。分子科学研究所では,その

(5)

ような未開の分野を切り拓く研究に挑戦していただきたい。新しい研究分野を開拓することと既存分野でのピークを 出すこととは本質的に異なる。勿論,研究には連続的な側面もあるが,既存分野でのピークを追求する研究が新分野 の開拓につながらないことは歴史の教えるところである。分子研ならではの独自の研究を目指さない限り放射光分子 科学の行方は見えてこない。

_ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ 委員D 1. 極端紫外光科学研究系について。

分子科学研究所における研究活動の柱を担う部門として尚所内外から大いに期待されている部門であると思います。 その期待の中で研究する研究者の使命は重大です。そもそも研究所設立は日本における分子科学を先導する中核的な 役割を担う研究機関にするという使命にあったと思います。しかし,文部省を含む各省庁から比較的研究資金が出回 るようになった昨今(サイエンスの基礎を支える部分へのてこ入れは尚充分ではないのは自明ですが)では大学にお ける実験環境もかなり改善されて来たこともあって,分子科学研究所と競合する相手が幾つも出てきたように思いま す。そのような中で研究所が当初の使命をどの様に果たして来ているのか,回りから常に問われて続けています。系 も例外ではありません。系の長所は研究所の極端紫外光施設(UVSOR)を専用して研究が展開出来るという点です。 これは一般の大学に所属する研究者には望めない有利な地位で,この点を多いに利用することが系の研究活動の高さ を内外にアピールする上で重要であると思われます。この点に関して云えば,レーザーとの同時分光,分子メスとし てのUVSORの利用,ナノ結晶創生への利用,自由電子レーザー開発,等で高い研究水準を維持していると評価出来ま す。今後とも系における分子科学の情報を世界に向けて発信するにはUVSORをフルに利用した研究が展開出来る様に 系の人事を含めた対応が今後一層研究所に要請される処です。報告を受けて気になった点は,各グループのスタッフ 数に濃淡があり,研究者が一人のグループがあるという点です。これは一時的な現象とは思いますが常に気を配って 頂きたい点です。

2. UVSORについて。

ケミカルマシン(C hemical Machine)のうたい文句で運転が開始されてから16年になりますが使い易さの特長を最大 限に生かしつつ他のリングでは得られない特色ある研究が行なえるリングとして利用されていると思います。分子メ スとしてのUVSOR利用・レーザーとの同時分光・有機物の研究・赤外放射光の利用等がこれに相当します。近い将来 の課題として気が付いた点を列挙します。

(1)機構化に伴ない,

UVSORはこれまでの分子科学研究所専用施設の色彩から機構全体の財産であると云う色彩に順次移行して行かざる を得ない様に思われます。21世紀は光と生命の時代ともいわれていますからUVSOR利用については同じ機構内の生 物・生命系の研究所との連携を常に模索してゆくことがUVSORに新しい側面を付与するという点で重要であると思い ます。その為には,系側に研究面でのチャンネルを持ち得る人材を配置する事も(系内に新しい分野の創設も含めて) 選択肢の一つです。

(2)光源の老朽化の中で,

世界の放射光施設と競争してゆく為にはUVSORならではの研究の特色を更に前に出すべきです。それらはレーザー とのドッキング,有機物系での利用,極低エネルギー領域での利用,等が挙げられます。

(3) UVSORの当面の対策。

第3世代のリングと競争しても意味がないでしょう。むしろ使い易さを前面に出し,低電子エミッタンスを要求し

(6)

ない実験を更に追求する方が得策です。そのためには観測系の光学系や真空の改良も視野に入れた蓄積電流の増大化 が望まれます。

(4) UVSORの将来像

先行するVUV・SXリング計画の先行きが見えない現状では(常に新しい計画を保持しているのは重要であるが)分 子科学研究所の新しいリング計画の可能性が高いとは思われません。そこで,各予算規模に応じた改良策を具体的に 練って予算要求し,UVSORの手当を実現してゆく事が重要であると思われます(30億以内で実現出来る計画,10億 で出来る計画,5億で出来る手当,等の様に。これは(3)とも関連する点である)。

_ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ 委員E 極端紫外光科学研究系は創設後8年間,気体分子および固体表面上の光化学や有機固体の光物性など分子科学的な 研究を大いに推進してきた。これには,専任部門の活動のみならず,流動部門の寄与が大変大きいと考えられる。特 に,流動部門は明確な課題を持ち,装置作りから,実験の遂行,データの解析,研究の完成まで短期間で精力的に行 い,新風を吹き込んだことが意義深い。さらに,研究系が独自のビームラインを持っていることも重要な点である。し かし,協力研究などで所外(国外を含む)の研究者と共同で研究を発展させるような面はまだまだ弱いように見える。 また,創設の目的であるUVSORの利用を通しての研究推進に関し,温度差がある様に見受けられる。このあたりは, 今後さらに自己点検を行って頂く必要があろう。一方,加速器や施設利用のビームラインを受け持っている極端紫外 光実験施設および外部ユーザーの研究活動も活発である。しかし,外部評価委員会においては,研究系と施設の協力 関係について殆んど触れられなかったのは残念である。

UVSORは完成後16年を経過したことは事実であるが,適正な保守・改良を行えば原子核研究所のシンクロトロンを 見る如く,加速器自体の寿命はそんなに短くはない(36年間)。これから光学系,検出器,測定装置などの高効率化に 積極的に取り組めばもっと成果が上がるであろう。しかし,新奇なテーマに対し,それに対応するビームラインを建 設できないことは否めない。この様な観点から現UVSORの upgrade や新しい光源も必要であろう。ねらうべき研究, 人員,土地,予算,時期等を考えると色々な案があり得る。多くの人の討論により,それぞれの案をまず作り,それ から各々の比較検討が必要であろう。もし,壮大な計画を立てるのであれば,分子科学者のさらなる利用,分子研の 人員の大幅な振替,岡崎研究機構三研究所の協力および東海地区の大学,研究機関の協力が必須である。

今後の方向として,分子科学という分野を大きく捉え,分子科学の学問的な研究のみならず,実用に関する基礎的 な研究も是非行って頂きたい。最後に具体的な研究課題として,現在私も開発に携わっているマイクロビームによる 顕微分光を一つ挙げておきたい。

4-6-3 国外委員の評価

_ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ 原文 EVALUATION OF THE DEPARTMENT OF VACUUM UV PHOTOSCIENCE

In a Letter dated July 27, 1999, Professor Koji Kaya, Director General of the Institute of Molecular Science, asked me to review the Department of Vacuum UV Photoscience. It was both an honour and a true pleasure for me to accept this invitation, in particular since I have followed closely the scientific work at UVSOR for the past 15 years.

On November 6, 1999, I was welcomed to Okazaki by Professors K. Kaya and T. Urisu. As part of the review process I had one- hour long interviews on Nov. 8-9 with nine professors: Prof. T. Urisu, Prof. N. Kosugi, Associate Prof. K. Mitsuke and Associate

(7)

Prof. T. Tahara from the Department of Vacuum UV Photoscience: Associate Prof. M. Kamada and Associate Prof. E. Shigemasa from UVSOR Facility; Prof. K. Kurosawa (from Miyazaki Univ.), Associate Prof. K. Fukui (from Fukui Univ.) and Associate Prof. S. Nagaoka (from Ehime Univ.) as visiting professors to the Department of Vacuum UV Photoscience on two-year terms. On Nov. 9 I also toured the UVSOR Facility and was informed about the capabilities of the machine and the different beamlines. Profesor T. Urisu had organized a most efficient schedule that made my visit very productive. This was my third visit to IMS and it was rewarding experience to take part of the continued great scientific progress.

My overall judgement is that the quality of science is excellent, as evidenced by an impressive publication record of articles in the most prestigious international journals in physics and chemistry. Several factors contribute to this and also point towards important future developments and are the base for my recommendations. The quality of the faculty and the junior scientists are high. The more senior faculty members are internationally well-recognized and world leading in their respective research fields. The younger faculty members and young scientists are doing impressive, independent work and are very promising for the future. The addition of top quality young scientists has been a healthy development for the Department and will continue to be an important factor for the future. The research profile of the Department has been strengthened during the last few years and it will be a challenge to keep up the dynamic developments. From the interviews I was particularly impressed that every faculty member had both well-defined and ambitious plans, and a clear vision, for the future research. I took also notice of the many collaborations, both national and international. The Department has always been known for its successful collaborative projects. These have been further strengthened over the years and have added to the high reputation of the Department. I consider these collaborative activities, also including the visiting professor programs, workshops and symposia, of critical importance for a continued dynamic development of the future research in the Department. In addition to research at UVSOR, ongoing and planned activities at other synchrotron radiation facilities will strengthen future programs and should be encouraged.

The research within the Department is well focussed on molecular science issues related both to the gas and condensed phases. There has been a continual effort to take part in the development of new fields, a fact which is very healthy to keep the department in the research frontier. It includes studies of; nanostructures, radiation stimulated processes on semiconductor surfaces, mechanisms for formation of negative-affinity surfaces, dynamics of ionization processes, excited states and molecular fragmentation, dynamics of superexcited states, different orbital contributions to resonances, and dynamics of photochemical/photophysical processes on the femtosecond timescale, to mention a few fields. In my opinion, the Department is doing research in the most active areas seen from an international point of view and will be a major contributor world-wide to the advancements of these fields in coming years.

The UVSOR has a central role for most of the research programs within the Department. Over the years there have been considerable investments in construction and upgrades of beamlines, insertion devices, monochromators and end-station equipment. The free- electron laser (FEL) is unique and belongs to a few storage-ring-based FELs worldwide with tunability down to very short wavelengths. The combination of conventional lasers with synchrotron radiation (SR) is the heart of many successful pump-probe experiments at UVSOR. Also the in situ combination of SR with other analysis and characterization techniques, e.g. infrared spectroscopy and tunneling microscopy, gives the Department unique research opportunities. Most noteworthy is also the exceedingly strong coupling between advanced computer model calculations and experiments, and the laboratory experiments using state-of-the-art femtosecond lasers.

From the discussion above my opinion should have become clear, namely that the Department has a very strong base to remain competitive in broad areas of molecular science in the future. But there are two issues which in my opinion should be given close

(8)

attention. My overall assessment is that there is a shortage of manpower in terms of both technicians and junior scientists. This problem is further enhanced by the fact the scientific and operational staff at UVSOR is very small (but extremely efficient, skilled and hard working !!). Therefore there is a danger that some research projects may become subcritical in terms of manpower to be scientifically effective. The other problematic area, in my opinion, is the age of the UVSOR storage ring. UVSOR is a second generation SR source and has by all standards been a great success and a very productive facility. In the long term future it will not be a competitive source with the third generation of sources in full operation. This will have serious consequences for the research programs in the Department. Therefore I strongly recommend that planning starts as soon as possible to upgrade or replace UVSOR. I am fully aware that initiatives have already been taken but a carefully planned, systematic and vigorous effort is necessary. I believe that a strong and compelling case can be made for an upgrade/replacement because of the following reasons. There are so heavy investments in beamlines, optics, end-station equipment and auxiliary instrumentation that the cost for an upgrade/replacement of the storage ring is just a small fraction of the existing and useful investments. The investment in human resources and expertise are also very substantial. Of course, all these investments are there because of the successful research programs based on UVSOR and the cental role UVSOR has for IMS. With the existing investments and well developed infrastructure for operating a SR facility IMS should be in an excellent position to argue that an upgrade/replacement of UVSOR is a very cost-effective way of proceeding with state-of-the-art research in Japan. In my opinion, research in molecular should continue to be the focus of the facility with an upgraded/replaced storage ring but careful consideration should be given to what extent the research can be broadened in certain areas and also involve an expanded research community outside IMS.

In summary, the Department of Vacuum UV Photoscience can look back at many extremely important and successful research accomplishments over the years and is well positioned to keep a leading role in molecular science world wide in the future. The future prospects and challenges are there to be met and should be a great stimulance for the Department. Personally I will follow the research in the Department with great interest and high expectations.

Stanford, November 22, 1999

Ingolf Lindau Professor

_ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ 訳文 極端紫外光科学研究系の点検評価

分子科学研究所長である茅幸二教授より1999年7月27日付けの手紙において,極端紫外光科学研究系の点検評価を 行うことの依頼を受けた。この招聘を受けることは,この15年間UVSORの科学的成果を注目し続けてきた私にとって, 大変名誉かつ真に嬉しいことであった。

1999年11月6日,茅教授と宇理須教授により岡崎に迎えていただいた。点検評価プロセスの一環として11月8日か ら9日にかけて,9名の教官のそれぞれ1時間にわたる面接を行った。9名の教官はそれぞれ,系からの宇理須教授, 小杉教授,見附助教授,田原助教授,および,UVSOR施設からの,鎌田助教授,繁政助教授および,2年間の任期の 流動研究部門の黒澤教授(宮崎大学から),福井助教授(福井大学から),長岡助教授(愛媛大学から)であった。11 月9日にはUVSOR施設を見学し装置や異なったそれぞれのビームラインの性能について説明を受けた。宇理須教授は

(9)

私の訪問をもっとも効率的なものとなるよう計画してくださった。これは私にとって3回目の訪問で,継続する偉大 な科学的進展に参画するというやりがいのある経験であった。

私の全般的判定は,非常に威信のある物理,化学分野の国際的学術雑誌に論文が掲載されていることに証されるご とく,科学的業績の質は非常にすぐれているというものである。いくつかの要因がこの判定に寄与しており,重要な 将来の発展を指摘している,そして私の勧告の基本ともなっている。研究系および若手研究者の質は高い。年長の研 究員は国際的に良く知られておりまた,それぞれの研究分野において国際的リーダーである。若い研究員および科学 者は印象に残る独自な仕事をしており将来が嘱望される。トップクラスの若い科学者を系の職員として加えることは 系の健全な発展であり,将来にわたって重要な要因であり続ける。系の研究状況は過去数年にわたって強化され続け てきたし,さらに躍動的な発展を維持し続けることは挑戦すべきことである。面接において特に感じたことは,すべ ての研究員が明瞭な野心に満ちた計画と明確な展望を将来の研究にたいして持っていることである。また,多くの国 内,国外との共同研究を遂行しているこも注目に値する。系は多くのその成功裏に終わった共同研究プロジェクトで 知られている。これらの点はここ数年にわたり強化され系の高い評価に加わってきた。これらの共同研究の活動は,流 動研究員制度,ワークショップ,シンポジウムなども含め系の将来の研究の躍動的な発展にとって本質的に重要なこ とである。UVSORでの研究に加えて,他の放射光施設での進行中および計画中の研究活動は将来の系の計画を強化す るものであり推奨すべきものである。 

系内の研究はガス系および凝集系の両方に関連して,良く分子科学の問題に焦点が絞られている。新しい分野を開 拓する絶え間ない努力がなされており,系が研究の最前線に保持し続けられているという健全さの事実である。いく つかの分野について言えば,ナノ構造の研究,イオン化過程の動的挙動,励起状態および分子の解離,超励起状態の 動的挙動,共鳴への異なる電子状態軌道の寄与,光化学,物理過程のフェムト秒時間スケールでの動的挙動などの研 究である。私の見解では,系は国際的観点から最も活発な研究分野において研究を展開していると言え,今後この分 野における発展において,国際的レベルでの主たる寄与者となることであろう。 

UVSORは系内のほとんど多くの研究プログラムにおいて中心的役割を担っている。何年にもわたって,ビームライ ン,挿入光源,分光器,およびエンドステーションの建設と高性能化にかなりの投資がなされてきた。自由電子レー ザは個性的で非常に短波長まで波長が可変と言う意味で国際的にも数少ない蓄積リング挿入型のものである。放射光 と通常のレーザを組み合わせる研究はUVSORで成功したポンプ−プローブ実験の代表的な成果と言える。また,SR と他の分析手法,例えば,赤外分光やトンネル電子顕微鏡などとの組み合わせは系にユニークな研究機会を作り出し ている。また,先端的な計算機のモデル計算と実験結果との結合や高度なフェムト秒レーザを用いた実験室での研究 も最も特記するに値するものである。

以上のことより,私の意見は明瞭なごとく,この系は将来にわたって分子科学の広い分野にわたって競争力を保持 できる強力な基盤をすでに有していると言える。しかし,私の意見として,注意を喚起したい二つの重要な問題があ る。全体的な評価として,技術者と若い研究者層でのマンパワーが不足している。この問題はUVSOR施設の研究者や 運転スタッフが非常に少ない事によってさらに深刻さが増幅されている(ただし,彼らは非常に能率的であり且つ熟 練しており,良く働いている)。したがって,いくつかの研究プロジェクトがマンパワーの点で,有効な科学的成果を 達成するに必要な規模を下回る危険性がある。私の見解として他の問題点はUVSOR 装置の老朽化である。UVSOR は 第二世代の放射光光源で,平均的な水準から言えば,極めて非常な成功を収めてきており,非常に生産性の良い施設 であった。長期的な将来展望において,しかし,フル稼働になった第三世代光源とは競争力をもたない。このことは, 系の研究プログラムにおいて深刻な結果をもたらすであろう。したがって,私はUVSORをより高性能なものに改造す

(10)

るか,新しいものにおきかえる計画を出来るだけ早くスタートする必要があると勧告する。第一歩はすでに踏み出さ れていると思われるが,しかし,注意深く組織的にかつ精力的な努力が必要とされることを強く感じた。以下の理由 で,高度化あるいは新装置導入について強い,説得力のある状況を作り出せると信じている。ビームライン,光学系, エンドステーション装置,および高性能な装置など,すでに相当な額の投資がしてあり,これらの現在有効に働いて いる投資にくらべ,光源装置の高度化あるいは新設のコストはほんの一部にしかすぎない。人的資源およびその専門 家教育になされている投資もまた非常に,かつ本質的に重要である。もちろん,これらのすべての投資は,UVSORの 優れた研究プログラムおよび,UVSORが分子研において中心的役割を担っていることにもとづいている。 これらの 現存する投資と放射光装置を良好に動作させるに必要な基盤設備にもとづけば,分子研は,日本において最先端の研 究を推進する上でUVSORの高度化あるいは新設は非常に経済的な道であると主張できる有利な状況にある。私の意見 としては, 高度化あるいは新設においても,分子科学研究を施設の目標とし続けるべきであろう。しかし,所定の分 野でどの程度まで研究を拡大できるか,および,分子研外部の広い研究共同体をどの程度まで取り込めるかについて は注意深い検討が必要である。

総体的に,振り返って,極端紫外研究系は過去何年間にわたり多くの極めて重要な研究の成功を達成してきており, 将来においても国際的な分子科学の分野において指導的役割を保ち続けるであろう。将来への展望や挑戦は適切なも のであり,系への大きな刺激となっている。私としても,系の今後の研究を大きな興味と期待を持って見守りたい。

スタンフォード,11月22日,1999 インゴルフ リンダウ

教授

参照

関連したドキュメント

大谷 和子 株式会社日本総合研究所 執行役員 垣内 秀介 東京大学大学院法学政治学研究科 教授 北澤 一樹 英知法律事務所

東北大学大学院医学系研究科の運動学分野門間陽樹講師、早稲田大学の川上

Analysis of the results suggested the following: (1) In boys, there was no clear trend with regard to their like and dislike of science, whereas in girls, it was significantly

るものの、およそ 1:1 の関係が得られた。冬季には TEOM の値はやや小さくなる傾 向にあった。これは SHARP

【 大学共 同研究 】 【個人特 別研究 】 【受託 研究】 【学 外共同 研究】 【寄 付研究 】.

話題提供者: 河﨑佳子 神戸大学大学院 人間発達環境学研究科 話題提供者: 酒井邦嘉# 東京大学大学院 総合文化研究科 話題提供者: 武居渡 金沢大学

社会学文献講読・文献研究(英) A・B 社会心理学文献講義/研究(英) A・B 文化人類学・民俗学文献講義/研究(英)

向井 康夫 : 東北大学大学院 生命科学研究科 助教 牧野 渡 : 東北大学大学院 生命科学研究科 助教 占部 城太郎 :